避妊手術や去勢手術はなぜ必要?

不妊治療は、望まない妊娠・出産の予防や、乳腺腫瘍など性ホルモンに関連する病気の予防のために行うものです。
不妊手術には、避妊手術と去勢手術があります。

避妊手術はメスが受ける手術のことで、避妊手術では開腹して卵巣や子宮を摘出します。去勢手術はオスが受ける手術のことで、陰嚢を切開して精巣を摘出します。手術の内容は違いますが、繁殖に必要な機能を手術で取り除くという点は同じです。
避妊手術や去勢手術の目的は、主に次の3つです。

避妊手術や去勢手術はなぜ必要

避妊手術や去勢手術の目的

  • 望まれない妊娠を避ける

  • 生殖器の病気、性ホルモンに関連した病気の予防

    メス:子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、偽妊娠など
    オス:前立腺肥大症、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫など

  • 性ホルモンに関連した問題行動の抑制

    メス:発情徴候(外陰部からの出血、鳴き声)など
    オス:スプレー行動、攻撃性、逃走癖、マウンティング行動など

動物は1回の出産で何匹も子供を産みます。不必要な妊娠・出産による負担からペットを守り適切な飼育環境を維持するためには、避妊手術・去勢手術を検討することも大切であるといえます。

避妊、去勢手術をしないとどうなるの?

望まれない妊娠・出産では、たくさんの産まれた子供の引き取り手がみつからないことで、きちんと養育できなくなる飼育崩壊につながったり、飼えなくなって捨てられてしまうことがあります。
また、避妊手術や去勢手術をすることによって防げたさまざまな病気にかかるリスクもあります。特に避妊手術を受けていない雌のうさぎさんでは、子宮に腫瘍ができる可能性がとても高いとされています。

加えて、発情期には問題行動を起こしやすくなります。それにより飼い主にもペットにもストレスが溜まる悪循環に陥ることもあります。

避妊手術や去勢手術はなぜ必要

避妊、去勢手術をしないとどうなるの?

メスの場合ですと、子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、偽妊娠などが代表的です。
オスだと、前立腺肥大症、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫などが挙げられます。

避妊、去勢時期の目安

  • アイコン

    初回発情が起こる前に手術を行うのが良いでしょう。病気を予防するために早い段階(生後6ヶ月前後)での手術が効果的です。
    5歳~10歳を過ぎたあたりからでも、全身麻酔に耐えられる健康状態であれば手術は可能ですが、年齢が上がるほど病気や麻酔へのリスクは高まります。

  • アイコン

    メスの猫ちゃんは遅くとも1歳までに手術を行うのが良いとされています。病気を予防するために、また、問題行動を抑制するためにも、生後6ヶ月前後での手術が効果的です。

  • アイコン

    麻酔に耐えられるようになる生後6ヶ月以降がおすすめです。
    メスの避妊手術は脂肪の付きが多くなると手術の難易度が上がるため、生後12ヶ月までに実施するのが良いでしょう。

避妊、去勢手術の流れ

  • 術前検査

    基本的に手術日~2週間以内に実施します。当院では、基本当日に検査を実施しています。身体検査(問診・視診・触診・聴診)、血液検査を行い、麻酔や手術が可能かどうかを確認します。年齢や身体検査に応じて心電図検査、胸部や腹部のレントゲン検査を行うこともあります。

  • 手術前日

    手術前日

    最近の研究では、手術前の栄養給与は安全性を高め、術後の回復を促進したり、合併症の発生リスクを低下させたりするそうですが、当院では、現在従来通り術前12時間の絶食をお願いしています。麻酔の方法によっては誤嚥のリスクがあり、術前の栄養給与はすべての症例に適していないため、避妊去勢手術では術前の絶食をお願いしております。

  • 手術当日

    手術当日

    前日の夜ご飯が終わりましたら、夜12時以降は食事を与えないでください。水はいつもの通りで大丈夫です。お預かり後には、血液検査や麻酔や点滴のための血管確保を行います。

  • 手 術

    滅菌器具を用いて、麻酔リスク、出血、痛みを最小限にするよう配慮して手術を行います。各種麻酔モニターで、術中は常にモニタリングして麻酔中の安全に努めます。手術中や術後の痛みを軽減するためのペインコントロールも行います。

    ●避妊手術(メス)
    卵巣のみ、あるいは卵巣・子宮の両方を摘出します。卵巣や子宮の摘出に関しまして、2023年より糸を使用せずに熱によるシーリングシステムで結紮や切除する摘出方法も採用しています。できるだけ糸を残さずカラダに優しい手術を目指しています。
    麻酔・手術時間はワンちゃんで1時間強、猫ちゃんで1時間ほど、うさぎさんで1時間弱ほどです。皮膚等の縫合は基本吸収糸で行うため抜糸はありませんが、傷口が大きくなった場合は吸収糸以外で縫合することもあり、その際は後日抜糸が必要となります。


    去勢手術(オス
     精巣を摘出します。猫ちゃんの場合は傷口の癒合が早いため、基本皮膚の縫合は行いませんが、傷口が大きくなった場合は皮下組織を吸収糸で縫合することがあります。うさぎさんの場合は、精巣を包んでいる総鞘膜を切開せずに摘出するクローズド法を採用しています。
    2023年より糸を使用せずに熱によるシーリングシステムで結紮や切除する摘出方法も採用しています。できるだけ糸を残さずカラダに優しい手術を目指しています。
    麻酔・手術時間はワンちゃんで40~50分、猫ちゃんで30~40分、うさぎさんで40~50分ほどです。
  • 覚醒~術後管理

    手術の終了後、麻酔からの覚醒が安定するまではペットの状態を観察し、呼吸状態、粘膜の色、心拍、体温などを確認します。動物の意識状態を確認し、少なくとも自力で姿勢が保てるようになるまで管理を続けます。特に麻酔から覚めることによる精神状態の変化や疼痛の有無には注意を払い対応しますが、人に見られていることにストレスを感じるケースでは、ケージにタオルをかけたり入院室を暗くするなどしてそっと見守ることが必要となります。
    基本的に、避妊手術は一泊入院、去勢手術は日帰りとなります。手術後はエリザベスカラーや腹部の腹帯テープにて術創の保護を行います。
    猫ちゃんの去勢手術を除き、手術後7日程度で傷口のチェックのためにご来院をお願いしています。異常が認められた場合、その後内服薬の投薬を行っていただく場合があります。特にアレルギー体質と思われる個体でしこり等の変化がまれに認められることがありますので、ご自宅での観察をお願いしております。また、術後のペインコントロールとして帰宅後の鎮痛剤を数日処方をしていますが、通常それ以上必要とならないことがほとんどです。